スプリングバックはいくつかのモードに分類することができるが、本章ではその中でも壁そりの原因と対策について解説する。 対策については本ページでは、壁そりの原因と影響因子について解説する。 そして次ページ以降、設計での対策と工程での対策それぞれ紹介する。

スプリングバック量(壁そり)|原因

壁そりの原因の解説の図

壁そりが生じる原因について説明する。a)~c)はハット断面の部品のドロー工程の模式図である。
成形初期ではフランジ部にある材料要素を対象とする(a)。
b)成形が進むことで材料要素はR部に到達する。R部では曲げ変形を受け、板外は引張の、板内は圧縮の荷重を受ける。
c)さらに成形が進むことで、材料要素は縦壁部に到達する。曲率を持った材料要素は直線に曲げ戻される。そのため板外は圧縮の、板内は引張の荷重を受ける。
d) 板外は圧縮の、板内は引張の残留応力があるので、板外が伸び板内が縮もうとする。そのため、離型後曲率ρを持つように壁が反る
このように壁が反る現象のことを壁そりという

これを応力ひずみ線図を用いて説明する。e)は板外の応力ひずみ線図である。
b)では板外は引張の荷重を受けるため、応力とひずみそれぞれ増加する。
次にc)では曲げ戻しを受けるので応力は負になる。またひずみは直線に戻され元の形に戻るので0になる。
そこから荷重を除荷すると、ひずみは正になる。そのため壁が外側に反ることがわかる。

スプリングバック量(壁そり)|角度変化との違い

角度変化と壁そりの大きな違いは、角度変化は下死点状態の表裏応力差によって生じたのに対し、壁そりは工程間で発生する表裏応力差によって生じる点である。
そのため、壁そりの影響因子は理論的に導き出せるものと、工程間に依存するものがある。
本ページでは、壁そり量の理論式と、そこからわかる影響因子について解説する。

スプリングバック量(壁そり)|理論式と導出

壁そりの寸法の図

直線だった材料要素が、残留応力を駆動力とした曲げモーメントMで半径ρに曲げられたとする。 スプリングバックは弾性領域での現象のため、曲げモーメントは以下の式で示せる。

\[ \frac{1}{\rho} = \frac{M}{EI} \]

なおEはヤング率、Iは断面二次モーメントである。 また平均変形抵抗σm、板厚tで置き換えることができ、以下の式で示せる。

\[ \frac{1}{\rho} = \frac{3\sigma_m}{Et} \]

計算式の詳細は均等曲げの解説記事を参照されたい。この記事で記載されているrをρに置き換えれば同式であることがわかると思われる。

スプリングバック量(壁そり)|影響因子

上の式より、壁そりに影響を与える因子がわかる。
つまり、以下の対策が壁そりを低減するうえで有効である。
・材料強度を下げる
・ヤング率の大きい材料を用いる
・板厚をあげる
・断面二次モーメントをあげる
・曲げモーメントを減らす

まとめ

本ページでは、スプリングバックのモードの一つである壁そりについて原因と影響因子について述べた。
次ページでは、壁そりを部品設計で対策する方法について説明する。

参考文献

薄鋼板成形技術研究会編、プレス成形難易ハンドブック 第4版、日刊工業新聞社 (2017)

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